問題と目的

社会の問題

現代社会が早急に解決すべき課題として、メンタルヘルスの増進、つまり心の健康づくりがあります。これまでに、成人期(おとな)の心理的問題の半数は児童期(こども)に始まっていることが明らかになっています。さらに、心理的問題が生じると、それによって当人だけでなく周りのサポートも必要となり、約2兆円の損失になるといった、社会経済的損失をもたらすことも明らかにされています(学校法人慶応義塾、2011)。そのため、“問題が浮かび上がってから”の対応ではなく、“問題が生じる前”の対応、つまり小学校での早期予防的観点が必要不可欠であるといえます。

プログラムの目的

本プログラムでは、教師が学級で実行可能な小学生対象のメンタルヘルス予防プログラム(Universal Unified Prevention Program for Diverse Disorders: UP2-D2)の実装を通じて、現代社会の抱える問題を切り抜ける適切な知識と技術である心理的レジリエンスを備えた市民の育成を行い、心の危機を自力で乗り越えられると知ってもらうことを目指します。さらに、集団活動を通じて学ぶことにより、困った人が周りにいるときに使える方法も身に着け、精神的な症状や病気に対する偏見を無くすことも目的としています。

プロジェクトのねらい

幼児から青少年までのレジリエンス向上を目指したプログラム開発と人材育成体制づくりをねらいとしています。

*プログラム開発

小学生版のメンタルヘルス予防プログラムを基盤として、新たに、中高生版メンタルヘルス予防プログラム、幼児版メンタルヘルス予防プログラム、タブレット端末を用いた電子版プログラムの開発を行っています。さらに、SDGsの「誰一人取り残さない」理念に沿って、多様な導入のあり方を実現するために、適応指導教室等の学校以外の実施場所におけるアレンジ版のプログラムの開発を目指しています。

*人材育成体制づくり

京都府におけるメンタルヘルス予防プログラムの実装活動を基盤として、滋賀県、兵庫県、福島県、東京都、宮崎県での定着化を目指します。教員が、各地域の教育委員会や関係諸機関と協働の上、学級で実施できるメンタルヘルス予防プログラムを自立的に実施する体制を整えるために、関係諸機関におけるコーディネーターとの連携を通じたこころあっぷ指導者による各地域の課題や導入の準備性に応じた段階性柔軟的多層的導入モデルを考案し、そのモデルに基づき導入を図っていきます。